アイボリーカーヴィングとは読んで字のごとく象牙彫刻のことです。
日本でも江戸時代における「根付け」彫刻の中に象牙がもちいられてきましたが、ヨーロッパで象牙が宝飾品に用いられるのは19世紀になってからです。
象牙は切削性がよく靭性に富んでいるので、カメオや透かし細工のブローチなど、非常に細かい彫刻をほどこすことができます。
また表現される場面が小さいので、卓越した彫刻技術と恐ろしく長い手間ひまが要求されるのです。
アイボリーカーヴィングの宝飾家は、アンティークジュエリーの世界で見ることができますが、現在制作している作家は塩島敏彦以外にほとんどいません。
それは象牙の素材が入手困難になったこともありますが、技術とコストのリスクが非常に大きい事が理由になっているようです。
幸い日本には、まだ象牙の在庫があり、素材を厳選することが出来ます。
塩島が使用している象牙は、ハード材と呼ばれる材質の中でも、中心部の一番良質な部分のみを使用し、細部にわたって入念な磨き仕上げが施してあります。そのため、象牙のアクセサリーによく見られるような変色は100年経過しても起こりにくいのです。